棹の塗りに関して、その種類と方法を解説する前に、そもそも棹はなぜ漆塗りが必要なのでしょうか。原木そのままの色合いを強調するのであれば、塗らないほうがより自然な味が出そうなものです。
三線の棹を塗る理由は、棹の保護を目的としています。
木は生きていますから、日々の湿度や環境によって変化します。真っ黒な原木でも、あるいは白太(木の白い部分)が混ざった木でも、それぞれの箇所で微妙に強度やしなりが異なります。その異なる部分が伸縮膨張などをする際に、割れたりするのです。
漆の種類 | 費用の目安 | 施工期間 |
本漆 | 30,000円 ~ 50,000円 | 3ヶ月 ~ 6ヶ月 |
ポリサイト | 5,000円 | 2週間 |
カシュー | 15,000円 | 1ヶ月 |
木工ウレタン | 20,000円 | 2ヶ月 |
元来、三線の塗りは本漆が使われていました。しかしながら近年では、人工漆が本漆に代用されるようになっています。
本漆は、乾く時間が人工漆に比べて長時間必要なため、塗りに時間が掛かります。漆職人に聞くと、その工程は最低でも半年は掛かるとのこと。多少工程を少なくするなどの工夫を施したとしても、3ヶ月は掛かるそうです。
本漆を使った擦り漆は文字通り薄く擦りながら塗るため、三線の棹本来の形状が美しく出るメリットがあります。
一方で、膜が薄いために耐久性に難があり、割れが出る可能性があります。
天然素材の本漆が棹には良いのですが、近年では本漆が塗られた棹は1〜2割り程度だと言われてます。その理由は前述の通り、漆が乾いて硬化するのに時間がかかるためと思われます。
カシュー、木工ウレタン、ポリサイトなどの人工漆は本漆に比べて施工時間が短いため、現在世の中の8割方の三線の塗りに使われてます。人工漆のメリットは、施工時間が短く、耐久性も強い点です。本漆は現在1~2割程度と少ないこともあり重宝される風潮がありますが、決して本漆が優れていて人工漆が劣後しているわけではありません。耐久性についてはどちらも五分五分、施工速度は人工漆に軍配があがるというところでしょうか。
本漆は時間と手間がかかります。これは三線に関わらずですが、手間がかかると貴重で良いもののように人の目に映ります。
確かに木との密着性などを考慮すると本漆は良いのですが、漆が乾いて硬化するまでの時間を考えると少々難があります。
みなみ三線店では、本来の塗りの目的でもある三線棹の保護(耐久性)と施工速度(利便性)の観点から、人工漆での塗りをお勧めしています。
本漆やポリサイトの塗りは刷毛塗りにて塗られます。本漆を刷毛でムラ無く均等に塗ろうとすると、最低でも半年はかかります。半年かけて慎重に塗らないと、トゥーイ(棹の表部分)が波打つようになります。見た目はもちろんのこと、弾き心地にも影響が出ます。
木工ウレタンはエアー吹付けで塗り重ねます。エアー吹付けは、塗りの膜を均等に塗ることができるので、塗りムラがなくトゥーイに波が出たりしません。エアー吹付けの場合、三線の顔(天)の角を立たせた塗りが可能です。エアーガンが使える木工ウレタン、カシュー塗りだと、2ヶ月でムラ無くきれいに仕上げることが可能なのです。時間を短縮しつつ、きれいに仕上げるのにオススメな方法です。
外壁や車用のウレタンと違い、木工ウレタンは棹にも密着性が良く耐久性も優れています。
塗り作業を重ねに重ねた後、1ヶ月ほど乾燥させます。乾燥後に磨き作業を行い、ようやく完成です。
塗り前の棹と塗り完成後の違いを見ると歴然としますね。長い工程を経て、何十にも重ねられた漆のコーティングにより、三線の棹は丈夫に保護されるのです。三線の曲線の美しさを損なわずに薄く均一に漆を塗れるかどうかは職人の腕次第です。