スンチー(春慶)塗りと黒塗り

別ページにて、本漆塗りと人工漆塗りの違いについて解説しました。このページでは、塗りの種類について解説します。一般的によく見られるスンチー塗りや黒塗り、あるいはつや消しについて写真とともに説明いたします。

 

演奏するジャンル(民謡、琉球古典音楽、Pops)やお手持ちの棹の白太の含有量などを考慮の上、種類を検討されると良いと思います。

ポピュラーなスンチー塗り

低価格三線~高級三線に至るまで、最も多く見られるのがスンチー(春慶)塗り。スンチー塗りとは簡単に言うと、木の木目をそのまま鮮やかに見せるよう、透明な漆加工を施す塗り方を呼びます。

 

もともとの語源は春慶と呼ばれる透明度の高い高級漆の種類から呼ばれるようになったそうです。

 

しかしながら、三線では春慶漆を使って加工することはほぼ無く、透明な加工を施すものを総称して呼んでいることが多いです。

 

 


白太多めの棹にオレンジ系スンチー
白太多めの棹にオレンジ系スンチー

透明といっても、厳密にはオレンジ系、レッド系、イエロー系など、木目(白太部分)に色がつくことが多く、好みによって選ばれます。

 

白太の含有量が多い棹にスンチー塗りを行うと、写真の棹のようにあります。

 

後述しますが、琉球古典音楽などでは、このようにオレンジや場合によっては黄色が目立つ漆は好まれません。

 

コンクールなどで減点されるかどうかはわかりませんが、あまり好まれないという話も聞きます。

木目を生かすという意味でもスンチー塗りは美しく、白太部分が多い場合にはオススメではありますが、TPOに合わせた塗りが求められることもありますので、注意が必要です。

 

比較的、赤、オレンジ系の塗りが多いように思いますが、白太部分が白色に近いもの(カミゲン黒木や本島産黒木など)は、黄色が美しくのるため、おすすめです。

 

ご自身の演奏シーンと好みに合わせて選択されると良いと思います。


レッド系スンチー

レッド系スンチー塗り三線

白太が白めなカミゲン黒木に赤色系のスンチーを塗ると、きれいな色が出やすいです。

 


オレンジ系スンチー

オレンジ系のスンチー塗り三線

オレンジ系のスンチー塗りです。こちらも白太の色によって色の出方が左右されますので、塗りを依頼する前にご相談ください。


イエロー系スンチー

イエロー系のスンチー塗り三線

イエロー系のスンチーは、白太が真っ白の場合はきれいに色が出ます。白太がカマゴンなどで赤っぽい場合はオレンジに近くなる場合がありますので、事前にご相談ください。


黒塗り

黒塗りとは、その名の通り黒く塗る漆加工の技法です。

黒色の塗料を混ぜることで、棹全体を黒くします。

 

スンチー塗りとは対照的に、棹自体を黒く塗るため、白太の多い棹だったとしても真っ黒に近い状態になります。

 

「三線といえば黒だからね」と言われる先生方もまだ多いと聞きますので、スンチーで色鮮やかになりそうな場合は、黒塗りで無難な形にするのも良いかと思います。

 

特に琉球古典音楽を嗜む方で白太が多い場合は、黒塗りがオススメです。



つや消し

そして、根強く人気なのがつや消しです。

艶消しは、紙やすりにて研ぎ出しでツヤを落としてます。つまり、表面に細かいキズを付けてツヤを消します。

 

塗料としてのつや消しを塗る方法もあるのですが、傷がついた時などアフターの対応ができないため、当店では行っておりません。

 

研ぎ出しの艶消しだと、何年後かに指の跡が光ってきたとしても、再研ぎ出しでツヤを落とすことができます。

 

研ぎ出しでのつや消しですので、スンチー塗りでも黒塗りでもつや消しは対応可能です。



塗り無し

漆塗り加工はもともと、棹の保護を目的に行うわけですが、原木の質が良い場合は、塗りなしにするのも一つの手です。

 

木材ですので、日常も湿度の変化に応じて多少の伸縮があり、木目の境目部分から割れが生じる可能性があります。

 

どんなに良材でも塗りを施さないことで、やはり長い期間を経て割れが出る可能性は高まるのですが、都度修復することで長く使い続けることは可能です。

 

直接木の感触を感じられるため、塗りなしを好まれる方も多くいらっしゃいます。



同一棹のイエロー系スンチーと黒塗りの比較

白太の多めな江戸与那城の比較写真です。もともとイエロー系スンチー塗りだった棹を黒塗り(つや消し)に仕上げました。どちらが良いというのではなく、どちらもそれぞれの特徴が明確に出ています。

その比較を写真でご覧ください。