前から見ても、後ろから見ても生粋のウチナーンチュの沖縄生まれの沖縄育ち。 三線の魅力に惹かれて数十年。三線の形の好みや音色の違いがハッキリと分かるまで相当な歳月を要したと思います。
私が初めて三線を握ったのは学生時代でした。その頃は「どの三線でも同じだ!」と思っていました。
勿論、当時は海外から輸入した三線などは流通していなかった時代です。
ですから「何が高い三線なのか?何が良い音なのか?」という事さえも全く気になりませんでした。
社会人になり、三線を弾く事、眺めてる事が好きになった私は時間を作っては沖縄県内の大勢の職人の三線を見て廻りました。様々な先輩方の作品を拝見させて頂く事が出来、自分の欲しい(目指す)三線のイメージが把握できるようになりました。
そんな時出会ったのが銘苅春政先生の素晴らしい作品でした。あまりの美しさに時間を忘れ、一瞬にして私の心を虜にしました。その後、銘苅春政先生に制作の指導を仰ぎながら自ら三線の研究に勤しみ工房を営んでおります。
先生は常々「もらうお金(代金)と手間(人件費)を計算して、三線は作るな!」と私に強く言い聞かせます。
住宅兼作業場でランニングコストを下げて、WEB配信は独自で行い営業費をカットした分 三線の材料や製作にお金と時間を掛けてます。
ご承知の通り、沖縄で古くから愛されている三線は生きている木を加工して作る楽器です。
生きてる木に手を加えるという事は、その木を殺す訳ではなく、その動きを把握し、新しい生命を吹き込むという事に!
大袈裟な表現になりますが、三線職人とは木と語い、ひたすら寝かせることから始まります。
その微動を見ては寝かせ、落ち着いたら削り、また寝かしては調整の繰り返し。完成形ではないものの、納得の行く三線が仕上がれば、次は塗りの工程へと入ります。
私も当初は塗り屋さんと呼ばれる職人の元へお願いしておりました。
しかし、塗りから帰ってきた三線を見ると私が求めていた三線とは異なり、ガッカリしたことも少なくありません。
キレイに出した角は丸くなり、塗料が垂れて波打っている事も・・・ 何度か同じような経験をした後、「よし!自分で塗ろう!」と決意しました。
決意したまでは良かったのですが、簡単に塗りが出来るのであれば他の三線屋さんも自分で塗っていますよね…
気がついた時には後戻りできない程の時間とお金を費やした事は事実です。
試行錯誤の末に編み出したのが、最高の鏡面仕上げ塗りの光り輝く三線です。
先にも述べたように三線の棹の制作には大変な時間を要しますが、加えて鏡面仕上げにする塗りもかなりの時間が掛かります。ようやく完成した三線に塗り工程までも行えば、その工賃は…
その度に銘苅先生の言葉「もらうお金(代金)と手間(人件費)を計算して、三線は作るな!」を肝に銘じて考えないようにしてます。 もしかしたら、私が制作する三線は他店様で扱う三線より若干高いと感じられるかもしれません。
しかし、それだけ以上の愛情、時間、労力を注ぎ込み作り上げた「こだわりの三線」ということを理解して頂ける方に購入して頂きたいと思っています。
私の技術と目を信頼し、制作を依頼して頂いたお客様の喜ぶ顔を思い浮かべながら日々精進しております。
私は三線の制作者であり、自ら舞台で皆さんを楽しませる演奏者でもあります。
三線制作を生業とし、演奏は趣味のひとつ。とは言っても軽い気持ちで演奏している訳ではありません。
三線に興味がない方にも三線の音色の素晴らしさ、美しさ、楽しさを知っていただく仕事のひとつだと信じて活動しています。
三度のメシより三線が好きで、朝から晩まで三線に触れることができる環境に感謝し、その三線で生活ができることをいつも誇りに思っています。肌身離さず三線に触れ、三線を眺めては飽きのこない美しいラインの研究、三線を演奏しては音質と音量の研究を重ねる毎日。
銘苅先生の考え方をしっかりと受け継ぎながら、次の世代、そのまた次の世代までも弾き続けてもらえる三線を生み出せるように、焦らず気負わず頑張っていきたいと思います。
三線は売ったら終わりではありません。売った時からメンテナンスが発生し、お客様との お付き合いになります。 今まで私に製作を依頼して下さったお客様の三線をメンテする為にも、健康管理と家族サービス を大切にしてます。 営業時間を9時〜17時(土,日,祝日休み)も2060年まで三線製作 を続ける為ですのでご理解下さい。
最後に、私に三線制作と演奏の仕事を与えて下さった先輩方に感謝を申し上げます。
オーダー三線製作は15万円よりお受けしてますが、「何をどう選んで良いのか分からない」方 ご予算に合わせてお任せでも大丈夫ですので、お気軽に御相談下さい。
みなみ三線店 店主 枝川 勝